介護業界の人手不足の実態について、そして対策についての情報をまとめています。
本記事では、飲食業界と介護業界の「正社員・非正社員率」のデータを参考にしつつ、介護業界の人手不足の実態と原因、そして未来に向けた対策を紹介しています。
仕事がスペシャリスト的なのか?マックジョブ的なのか?という視点から解説していますので、興味のある方は一読ください。
介護業界の社員比率は飲食業界化する?人手不足対策|スペシャリストとマックジョブ
介護業界の正社員・非正社員率
- 正社員 52.8%
- 正社員以外 47.2%
飲食業界の正社員・非正社員率
- 正社員 19.0%
- 正社員以外 81.0%
「参考:サービス産業動向調査 調査結果 厚生労働省」
介護業界と比較し、飲食業界は「正社員以外」の比率が高いです。つまり、アルバイトやパートの人の割合が多いと考えられるでしょう。
今後、介護業界の正社員・非正社員率も飲食業界の比率に近づいていくのではないでしょうか。
その時、スペシャリスト・マックジョブの仕事を考える必要性が出てきます。
飲食店の店長は管理のスペシャリスト|介護の仕事も管理のスペシャリストが必要になる
介護業界でも、管理のスペシャリストが必要になってくるのではないでしょうか。
飲食業界は正社員の割合が少なく、非常勤の割合が多い業界です。つまり、管理者がパートやアルバイトの労働者を「適切に管理」してうまく事業を回しているのです。
介護業界もこのようになっていくことが予測されます。必要なのはパートやアルバイトが多くでも「適切な管理」ができることでしょう。
飲食店の正社員あるいは店長である管理者は、アルバイトやパートが多くでも事業を回すことのできる管理のスペシャリストなのです。
スペシャリストとは、専門家のことを指します。労働力が不安定であったり、専門的なスキルがあるとは限らなかったりするパートやアルバイトの労働者をまとめ、適切な価値提供のできる能力は、「管理のスペシャリスト」と言えるでしょう。
労働集約型の産業で最もかかるコストは人件費
介護業界も飲食業界も労働集約型の産業であり、労働者の賃金が低く、労働生産性が低くなりやすい業界であることに変わりはありません。
労働集約型とは、人間の労働力に頼る割合が大きい産業のことを指します。介護は、人が主に行うものであり、労働集約型になるのです。
介護業界は「介護報酬」が定められており「要介護度」によって、報酬が変動します。
たとえば、「ユニット型介護老人福祉施設」では「要介護度5」の利用者一人に対し、「1日あたり894単位+加算の単位」の報酬が得られます。つまり、1名1日あたり8940円以上の収益が出るということになります。
この介護報酬によって、介護事業所の収益は決まってきます。収益がある程度高く、安定したままの状態が続けば人件費の削減は必要ありません。しかし、介護報酬が低下し利益率が低下したらどうなるでしょうか。
最も経費がかかる人件費の部分の変化を考えなければならなくなります。
その時、正社員を雇うことによって社会保険などのコスト負担が事業所に発生する雇用形態からパートやアルバイトの割合を増加させていく流れになることが1つの案として考えられるでしょう。
それを適正に、質を落とさずにサービスを管理していくことが必要になるのです。
人口減少により税収が低下し介護報酬を保てなくなる可能性がある
日本の人口は徐々に減少しています。総務省推計によると、人口減少率は9年連続であり過去最高の人口減少率の記録を2020年に更新しています。
当然、その分税収は減少するでしょう。いかに介護保険の財源の内訳を示します。
介護保険の財源の内容を見れば全てが税金で賄われていることが分かります。人口が減少すれば、当然財源も無くなっていく予想がされるでしょう。
詳しくは↓で
つまり
- 人口減少
- 税収の低下
- 介護報酬の低下
という流れが容易に起こり得る状況だということになります。介護報酬は減少するか、あるいは介護保険利用者の負担が増加するか、どちらも発生する可能性のある事案です。
介護報酬が減少すれば介護事業所の収益は当然ながら低下します。
介護保険料の利用者負担が増加すれば介護保険利用者がお金の問題で保険を利用できないという状況もあり得るでしょう。そうなると、介護事業所の集客が難しくなり収益は低下します。
どちらにせよ、人口減少の加速は介護事業所の収益が低下する可能性があるのです。
その仕事はスペシャリスト的か?マックジョブ的か?
介護事業の収益低下が見込まれる中で必要なのは、仕事を「スペシャリスト的」なのか「マックジョブ的」なのかにしっかりと分けて考えることです。
マックジョブとは、バックオフィスとも呼ばれ、定型業務をする人のことを指します。仕事がマニュアル化されており、誰がその仕事をしても同じ質を保てる仕事のことです。
飲食店のアルバイトはスペシャリスト?マックジョブ?
「管理のスペシャリスト」のいる飲食店はどのように事業をしているのか。
たとえば、ファミリーレストランだったらどのように仕事を効率的にしているのか考えてみます。
ランチタイムに店長が1人に対し、アルバイトが5人でも質を落とすことなく顧客に価値提供できているはずです。
お客さんとしてファミリーレストランに行ったことのある方だったら、特に大きな問題なくそのお店の料理を美味しくいただいて満足して帰っているのではないでしょうか。
ファミリーレストランのアルバイトは料理や接客のスペシャリストでしょうか?決して全員がスペシャリストではないはずです。学生の方も多い中であっても適切に価値提供ができるマックジョブのシステムがあり、管理者がいることによって問題なく運営が行えているのでしょう。
管理はスペシャリストである正社員や店長が、定型業務はマックジョブであるアルバイトがこなすことで成り立っていると言えるのではないでしょうか。
介護の仕事はしっかりとスペシャリストとマックジョブに分けられているか
それでは、正社員の多い介護業界はどうでしょうか。飲食店と比較し、アルバイトやパートの比率は少なく、専門資格を持ったスペシャリストが比較的多いことが予想されます。
しかし、介護現場の実態はスペシャリストがマックジョブ的な仕事をしていたり、マックジョブがスペシャリスト的な仕事をしているのではないでしょうか。
たとえば、スペシャリストである介護福祉士が掃除をしていたり、お茶を作っていたり、シーツ交換をやっていたりする現状があるでしょう。
反対にパートやアルバイトの方が難しい認知症利用者の方の対応を主にするという現状があるでしょう。
そもそも「正社員」という言葉は日本特有であり、スペシャリストなのかマックジョブなのか分かりにくいとされています。
飲食店では正社員であっても管理のスペシャリスト的な側面があるのに対し、介護では飲食での正社員と比較してハッキリと分かりにくい側面があります。
それは、仕事を「スペシャリスト」と「マックジョブ」に適切に振り分けられていないからです。
マックジョブであるマニュアル化され、誰がその仕事をしても同じ質を保てる定型業務は、スペシャリストが行うと人件費がかかります。
逆にスペシャリストの業務をそれ以外の方が担当するとサービス提供の質が低下します。
だからこそ、しっかりと業務を仕分ける必要があるのです。
誰がやっても質が保てるような仕事、お茶作りやシーツ交換や掃除などは、マックジョブの方に行なってもらい、認知症の方の対応など専門性を要する場面にスペシャリストを配置するのです。
そうやって業務を仕分けることで適切な人員配置とコスト削減が行えるのです。社員の比率が飲食業界に近づく時、そうならざるをえない時代がやってくるのではないでしょうか。
今のままで問題ない?2025年問題|日本の人口減少
今のままで運営ができているから問題ないと思う方もいるでしょう。しかし、2025問題と呼ばれる後期高齢者が急増するタイミングはもうすぐそこまできているのです。
いわゆるベビーブーム世代が後期高齢者となり、高齢者数が増加し要介護者も認定率から考えれば必然的に増加すると予想されます。
さらに、厚生労働省は介護事業所の人員配置基準を緩和する方針を出しています。
以下参照
「グループホーム夜勤体制、人員配置を一部緩和 3ユニットのみ条件付きで 厚労省 JOINTより」
いかにサービスの質を落とさずに効率的な介護を提供できるかがキーポイントになってくることは間違いないのではないでしょうか。
まとめ
これからの介護業界は、スペシャリスト的な仕事なのか、マックジョブ的な仕事なのかをしっかりと振り分けて対応していく必要性のある状況に突入していく時代ではないでしょうか。
雑務を含め、全てをスペシャリストで対応していくと人件費がかさみ、利益率は低下し、結果的に継続的な介護サービスを提供できなくなることは職員にとっても利用者にとっても不利益です。
他の業界から学び、管理的視点を持って運営に臨むことが大切になるでしょう。
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