見当識障害について|症状と対策まとめ

  介護コラム  

見当識障害について、症状と対策が分かりにくく、お困りになる方は少なくないでしょう。

症状が複数あるため、対策を具体的にどのようにすれば良いのでしょうか。

本記事では、見当識障害の3つの症状を解説した上で具体的な対策を紹介します。

  • 見当識障害の3つの症状
  • それぞれの症状に合わせた対策

ぜひ最後までご覧いただき、見当識障害への対策の参考にして下さい。

見当識障害とは

見出し分けが必要な場合は見出し分けしてください。

見当識障害とは、「今はいつなのかという時間に関すること」「ここはどこなのかという場所に関すること」「この人は誰なのかという人物に関すること」という正しく状況を判断する見当識と呼ばれる能力が障害されることを指します。

主に認知症の方にみられやすい障害です。

認知症になると、近似記憶という少し前のことを思い出す「時間の見当識」から障害され、その次に「場所の見当識」、「人物の見当識」という順に障害されていくことが一般的とされています。

高齢者の場合、数日や数年の間違いがあっても必ずしも認知症とは判断できません。

認知症にはさまざまな症状があり、しっかりと判断するには適切な診断が必要になるでしょう。

また、見当識障害は認知症だけでなく、脳の疾患やせん妄でもみられることがあります。

見当識障害の症状について

認知症

見当識障害の症状は、主に「何かが分からなくなる」ということです。

分からなくなることによってさまざまな状態を引き起こす可能性があるでしょう。

その症状としては、主に「時間が分からなくなる」「場所が分からなくなる」「人物が分からなくなる」の3つが挙げられます。

それぞれの症状が引き起こす状態を例を交えて以下に記載します。

時間が分からなくなってしまう

生活の中で今日の日付を間違ってしまうことは誰しもあります。

しかし、時間の見当識が障害されると日付だけでなく今日が何月かも分からなくなってしまうことがあるのです。

徐々に季節が分からなくなったり、自分の年齢が分からなくなったり、昼夜が分からなくなったりすることがあるでしょう。

時間の見当識障害の症状が出現すると生活に支障をきたすことがあります。

たとえば

  • 夏の季節になっても冬だと思い込み、厚着で過ごしてしまう
  • 自分の年齢を忘れてしまい、親や子どもの状態が分からなくなってしまう
  • 夜になっても朝だと思い込み、夜中に散歩に出かけてしまう

といったことが考えられるでしょう。

時間の見当識の障害によって熱中症になってしまったり、暗い道を歩いてケガをしてしまったりする可能性があります。

場所が分からなくなってしまう

一般的に、時間の見当識の次に障害されるのが場所の見当識とされています。

場所の見当識障害が生じると、いつも通っている商店街までの道順が分からなくなったり、通い慣れた場所が認識できなくなったりするでしょう。

自分の家を認識できなることさえあります。

場所の見当識障害の症状が出現すると以下のような生活の支障をきたすことがあります。

たとえば

  • 通い慣れているはずの商店街を目指して歩き出し、道に迷ってしまう
  • 普段から通っている病院が認識できずに興奮してしまう
  • 自分の家にいても家屋内のトイレなどの目的地に辿り着けなくなってしまう

といったことが考えられるでしょう。

場所の見当識の障害によって、外出すると自宅に戻ってくることが困難になったり、自宅にいても自宅だと認識できなくなったりする可能性があります。

人物が分からなくなってしまう

見当識障害の症状がさらに進行すると、人物の認識が難しくなってくるとされています。

人物の見当識障害が生じると、友人に会っても誰だか分からなくなったり、親戚に会っても誰だか分からなくなったりします。

家族であっても認識できなくなることもあるでしょう。

人物の見当識障害の症状が出現すると以下のような生活の支障をきたすことがあります。

たとえば

  • 親しい友人と通う体操教室で不穏になってしまう
  • 親戚のことを家族と間違ってしまう
  • 家族のことを他人だと思い、遠ざけてしまう

といったことが考えられるでしょう。

人物の見当識障害によって、状況把握できずに混乱して興奮したり、家族としてコミュニケーションを取るのが難しくなったりする可能性があります。

見当識障害の対策について

見当識障害対策

見当識障害の症状に対し、それぞれに合わせた対策について紹介します。

時間の見当識障害への対策

時間が分からなくなってしまう症状がみられるのであれば、『今の日時』が分かりやすくなるように対策をするのが良いでしょう。

時間の見当識障害の症状がみられたら、同時に言葉までが分からなくなるということではありません。

なので、文字や言葉、表現などを使って分かりやすくすることが大切になります。

たとえば

  • 日めくりカレンダーを利用する
  • 時計を目立つようにする
  • 会話をする時に季節や日時の話をする
  • 日時を意識した家族や親族の話をする
  • 日光を取り入れて昼夜を分かりやすくする

などの対策が考えられます。

認知症の型によっては、見えている物を正確に認識しにくいことがあるので声を発して確認することが大切になる時もあるでしょう。

また、日時を分かりやすくするために生活空間を大幅に変えることは良くありません。

今まで生活していた環境に慣れていれば、自然とカレンダーの位置や時計の位置が分かり、確認する習慣があるかもしれません。

その方の生活・習慣に合わせた方法を考えることが大切になるでしょう。

場所の見当識障害への対策

場所が分からなくなってしまう症状がみられるのであれば、『目的地』が分かるように対策をするのが良いでしょう。

場所の見当識障害の症状が出現すると、環境を理解することが難しくなるとされています。

目的地まで誘導するような対策や、目的地がはっきりと分かりやすくなるような対策が大切になるでしょう。

自宅外の環境を整えることは難しいですが、自宅内の生活に問題が生じるのであれば以下のような対策が考えられます。

たとえば

  • トイレのドアに『トイレ』と書いた紙を貼る
  • 目的地の方向が分かるような張り紙をする
  • 目的地まで誘導するようにフットライトを配置する
  • 今いる場所がどこなのかを織り交ぜた会話をする
  • 場所が分からなくても、安心できる場所だと認識してもらう

などが対策として考えられるでしょう。

場所の見当識が障害されると、ドアを見ても何のドアなのかが分からなくなったり、暗い中だと周りの環境の配置が分からなくなったりするのです。

症状が進行すると、本人がトイレに座っていてもトイレだと分からなくなることもあるでしょう。そのような時は、安心できるような声かけが大切になってきます。

住み慣れた家であれば、家具の配置などを急に変えてしまうと混乱が生じる恐れがあります。慣れた生活空間の中で、その方に合った対策をするのが良いのではないでしょうか。

人物の見当識障害への対策

人物が分からなくなってしまう症状がみられるのであれば、本人が安心できるように関わることが大事になってきます。

人物の見当識障害の症状が出現すると、人との関係性が分からなくなってしまいます。

しかし、認知症が進行し、見当識障害の症状が進行しても感情は残りやすいといわれています。

人物や関係性が分からなくても、良い感情で接することができるのだとお互いに認識し合うコミュニケーションを取ることが対策として考えられます。

たとえば

  • 笑顔で接する
  • 怒らずに対応する
  • 感謝の言葉を伝える
  • 共感の気持ちを伝える
  • 相手の考えを否定せずに受け入れる

などが対策として考えられるでしょう。

人物の見当識が障害されると、知人のことを家族と認識したり、家族であっても他人だと認識してしまったりする可能性があります。

症状が進行すると、自分の出生や名前の認識も難しくなることもあるでしょう。

自分や相手のことが分からなくなってしまうと、不安になりやすくなります。

関係性が分からなくても安心を感じられるかどうかが大切になるのではないでしょうか。

見当識障害の予防策について

見当識障害は主に認知症でみられる症状です。よって、認知症の予防をすることが大切になるでしょう。

また、見当識障害が生じたからといって行動を制限すると障害のさらなる進行を含めたさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。

見当識障害の状態に合わせて適切に予防策を取る必要があるでしょう。

非薬物療法で予防する

軽度認知障害の状態から、重度に至るまで幅広く対応が可能な療法です。

早めに対策を行うことができれば、認知症の症状である見当識障害の進行を遅らせることができる可能性があるとされています。

非薬物療法である運動療法では、有酸素運動をすることによって脳血流量が増加し、認知症の予防に効果が期待できるとされているのです。

他にも、音楽療法や回想法などが非薬物療法とされており、脳が刺激されることによって症状の改善や進行抑制の可能性が期待されます。

生活リハビリやバランスの良い食事も予防策になり得るでしょう。

薬物療法で予防する

薬物療法を行い、症状の予防や改善を図るのであれば医師の診断と処方が必要になります。

最近では、アデュカヌマブというアルツハイマー病に対する初めての治療薬が開発されましたが、一般的な認知症に対する薬物療法は進行の抑制に作用するものであり、悪化の予防策とらなるものです。

薬の処方は認知症の型や進行度、症状などによって変わるため、専門医の診断を受けて、日常生活の様子をできるだけ正確に伝えることが大事になるでしょう。

認知症以外の見当識障害の場合

脳腫瘍や正常圧水頭症、せん妄など、認知症以外の疾患や障害によって見当識障害を生じることがあります。

そのような場合は、疾患の治療によって見当識障害の悪化予防のみでなく、改善される可能性があるでしょう。

見当識障害のまとめ

見当識障害の症状は以下の通りです。

  • 時間が分からなくなる
  • 場所が分からなくなる
  • 人物が分からなくなる

一般的に『時間』『場所』『人物』の順で障害されていきます。

見当識障害の対策は以下の通りです。

  • 今の日時を分かりやすくする
  • 目的の場所を分かりやすくする
  • 安心できる人物だと感じられるように接する

ここまで見当識障害の症状についての情報や、対策などを中心にお伝えしてきました。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました