【介護】業務効率化の基礎は判断の回数を減らすこと

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介護業務効率化の重要性

この記事を読まれている方は、すでに介護業務の効率化の重要さは理解していると思いますので、この章では、おおまかな説明をします。

業務効率化のメリット

介護業務の効率化には多くのメリットがあります。まず、介護スタッフの負担軽減です。日々の業務が効率的に進むことで、スタッフは無理なく仕事をこなせるようになり、ストレスが軽減されます。

また、利用者へのサービスの質の向上にもつながります。効率化によって時間やリソースが確保されるため、一人ひとりに対してより質の高いケアが提供できるようになります。

現場の課題と現状

現在、介護現場はさまざまな課題に直面しています。その一つが人手不足です。多くの施設がスタッフの確保に苦労しており、その結果、既存のスタッフに大きな負担がかかっています。

介護スタッフの判断の回数が多くなるとダメ

本題に入ります。

人は1日に判断できる回数が限られているとされています。そして、判断回数が多くなると疲労してしまい、重要な判断が上手く行えなくなる可能性があります。

当然ながら、判断を求められる回数が多いと、現場の介護スタッフの負担が増え、業務のミスも増加します。たとえば、食事介助の際に毎回利用者の好みやアレルギー情報を確認する必要がある場合、その都度スタッフが判断を下すことになります。これにより、利用者へのサービスの質が低下するリスクが高まります。

また、頻繁な判断が求められることで、スタッフは重要な業務に集中できず、時間の無駄も生じます。たとえば、入浴介助の際に利用者ごとに適切な温度設定や使用する入浴剤を判断しなければならない場合、効率が悪くなります。このような状況では、スタッフが迅速かつ一貫した対応をすることが難しくなります。

さらに、判断の回数が多いと、スタッフのストレスが増大し、長期的には離職率の上昇にもつながります。例えば、新人スタッフが慣れないうちに頻繁に判断を迫られると、自信を失い、職場に対する不安が高まります。これにより、職場の雰囲気が悪化し、チーム全体のモチベーションにも影響を及ぼします。

判断の回数を減らすことで、これらの問題を軽減し、より効率的で質の高い介護を提供できるようになります。具体的には、作業手順書の作成やマニュアルの見直し、業務管理システムの導入などが効果的です。これにより、スタッフはルーチンワークに集中でき、イレギュラーかつ重要な判断も迅速・正確に行えるようになります。結果として、利用者へのサービスの質が向上し、スタッフの負担も軽減されるでしょう。

参考:https://studyhacker.net/decision-fatigue

判断の回数を減らす方法

それでは、具体的にどのように介護スタッフの判断の回数を減らすかについて、以下に解説します。

標準化とマニュアル化の推進

判断の回数を減らすためには、業務の標準化とマニュアル化が重要です。これにより、スタッフが同じ基準で作業を行うことができ、判断に費やす時間と労力を大幅に削減できます。

以下で、詳細に解説します。

【標準作業手順書の作成】

標準作業手順書(SOP)を作成することは、業務の一貫性を保つための基本です。たとえば、入浴ケアの手順を詳細に記載したSOPを作成することで、どのスタッフが対応しても同じ方法で入浴介助を行うことができます。これにより、判断の余地が減り、迅速かつ正確な対応が可能になります。また、緊急時の対応手順をあらかじめ決めておくことで、スタッフは迷わず行動でき、利用者の安全を確保できます。

【マニュアルの見直しと更新】

マニュアルは一度作成して終わりではなく、定期的に見直しと更新が必要です。たとえば、新しい介護技術や機器が導入された場合、それに応じたマニュアルの更新が求められます。更新されたマニュアルには、新しい手順や注意点が明記されるため、スタッフは最新の情報に基づいて業務を行うことができます。具体的には、食事介助の際に使用する道具の変更やICT機器の追加などが挙げられます。これにより、スタッフは最新の情報を共有しつつ、適切な方法で業務を行い、利用者に対して最適なサービスを提供できます。

さらに、標準から外れた仕事を認識しやすくなり、エラーへの対応に集中できるでしょう。

【標準化の具体例】

たとえば、毎日の薬の配布に関する判断を減らすため、薬のタイミングごとにパッケージをマーカーで色分けします。これにより、スタッフは色を確認するだけで適切な薬を迅速に配布できるようになります。

その他、認知症の利用者に対する対応方法を統一するためのSOPを作成し、全スタッフが同じ手順でコミュニケーションを取ることを徹底します。(ユマニチュードなどの活用)これにより、利用者の混乱を防ぎ、安定したサービス提供が可能になります。

標準化とマニュアル化を推進することで、スタッフは日常業務の中でのトラブルや判断回数を減らし、効率的に業務を遂行できるようになります。結果として、介護サービスの質が向上し、スタッフの負担も軽減されます。

IT技術の活用

業務の効率化には、IT技術の活用も効果的です。業務管理システムの導入により、スケジュール管理やタスクの進捗状況を一元管理でき、スタッフ間の連携がスムーズになります。また、デジタル記録の利便性も見逃せません。紙の記録からデジタル記録に移行することで、情報の検索や情報共有が迅速に行えるようになります。

判断の回数が減ると重要な仕事に向き合える

判断の回数を減らすことで、介護スタッフは本来の重要な仕事に集中することができるようになります。例えば、利用者の状態観察や個別ケアの質向上に時間を割くことが可能になります。これにより、利用者一人ひとりのニーズに応じたきめ細やかな対応ができ、利用者の満足度も向上します。

また、スタッフの専門性を活かした高度なケアやリハビリテーションの提供にも集中できるようになります。判断の回数が減ることで、業務の優先順位が明確になり、重要な業務に対するリソース配分が最適化されます。結果として、施設全体の運営効率が向上し、利用者に対するサービスの質も一層高まるでしょう。

このように、判断の回数を減らすことで、介護スタッフは重要な業務に専念でき、全体の業務効率が向上します。したがって、業務の標準化やIT技術の活用など、判断を減らす取り組みを積極的に推進することが重要です。

実際の現場での効率化事例

ここでは、現場の効率化事例について紹介します。

夜間巡回負担軽減の成功事例

「見守り介護ロボット」を活用して夜間巡回のスタッフの負担を軽減できたという報告がされた事例を紹介します。

具体的な改善方法としては、見守り介護ロボットのバイタル検知機能(脈拍・呼吸数測定)を活用し、目視で利用者の身体を確認する生存確認の業務をパソコンやスマホの画面確認で済ますように変更しました。

これにより、夜勤時の生存確認のための巡回が少なくなり、広いフロアをひたすら歩き回る必要が無くなりました。

また、バイタルサインが自動検知できることにより、異常の察知も容易に行えるようになりました。

見守り介護ロボットを活用することで、巡回による身体的・精神的な負担が軽減され、夜勤者の仕事が効率的になった事例です。

これは「利用者さんが呼吸をしているのか?バイタルはどうなのか?」といった判断回数を減らすことができることで、その他の業務に集中できる良い例です。

最新技術(ICT機器)の導入事例

「スマートフォンとタブレット」「タブレットで使用できる介護ソフト」を導入することにより、業務が効率化された事例を紹介します。

具体的には、紙カルテから電子カルテへの移行により以下のように変更がされました。

  • 入力媒体が複数になる
  • 各媒体からすべての個人カルテにアクセスできる
  • 共有ノートの廃止

これらの改善により、以下の非効率的な構造が改善されました。

  • カルテ記入の待ち時間の解消
  • 転記に要する時間の解消

紙媒体での管理の問題点として、紙カルテを持ち運び、記入するために、カルテを探す時間が生まれたり、同一カルテに記入するための待ち時間が生まれたりすることが挙げられます。

また、紙媒体の場合はパソコンなどのように画面共有できないため、転記する必要が生まれます。時には、「カルテ」「メモ」「ノート」の3回も同じことを記入することもあるでしょう。

これらの生産性の無いムダな業務を改善することで、記録による残業の抑制や、介護実務の焦りなどを解消できます。

これについては「どこまで、何回書く必要性があるか?ノートとカルテか?カルテのみで良いか?」といった判断と書く労力を減らせるでしょう。

効率化の進め方と注意点

補足になりますが、業務効率化のポイントについて、ここで解説します。

効率化の進め方を間違ってしまうと、いくら良い危機を導入したとしても、何もプロジェクトが進まずに失敗してしまう可能性があります。

ここでは、効率化の進め方と注意点を解説します。

目標設定と進捗管理

効率化を進めるためには、明確な目標設定と進捗管理が重要です。目標の設定により、具体的かつ達成可能な目標を立てることができます。たとえば、以下のように計画を立てると良いでしょう。

  • 5月までに施設の問題点を洗い出し、改善目標を決める
  • 7月までに介護ロボットを選定する
  • 10月に介護ロボットが導入されるまでの間、介護ロボット使用に関するマニュアルを作成する
  • 11月までに介護ロボットの一部運用を行う
  • 12月までに介護ロボットを全床活用する

といったように期間を決めて計画を立てると、計画修正なども行いやすいでしょう。

また、定期的な評価とフィードバックを行うことで、進捗状況を確認し、必要に応じて改善策を講じることができます。

チームでの取り組み

効率化はチーム全体で取り組むべき課題です。コミュニケーションの重要性を理解し、情報共有や意見交換を積極的に行うことが必要です。役割分担と協力体制を整えることで、各自が自分の役割を果たしつつ、チーム全体の目標に向かって協力することができます。

具体的には「トップダウン」の指示系統が大切になります。介護業界の場合、トップダウンの指示系統が働いていないケースが多々あるでしょう。その場合、プロジェクトリーダー程度のポジション指示ではスタッフは動かず、失敗する可能性が高いです。

そのため、トップマネジメントクラスの役職の方が法人の方針としてIT化を推進していくという内容を発信することが大切になるでしょう。

プロジェクトチームレベルで完結するように考えてしまうと、結局、現場を動かす権限を持っておらず、何も動かない可能性があります。(一時的に権限を持たせるということができれば良いですが…)

まとめ

介護業務の効率化は、今後ますます重要となるテーマです。技術の進歩や新しい方法の導入により、さらなる効率化が厚生労働省からも期待されています。効率化の未来を見据え、常に最新の情報を取り入れ、柔軟に対応していくことが求められます。

もちろん、それに伴い、報酬改定は厳しくなるでしょう。また人員配置基準にも緩和の動きがみられるかもしれません。

どちらにせよ介護業界全体の発展には、業務効率化が不可欠です。効率化により、スタッフの負担が軽減されることで、離職率の低下や新たな人材の確保が期待されます。

人材不足の中で介護業務をこなす必要性が生まれたタイミングでも、業務効率化が活かされることでしょう。

介護業務の効率化はスタッフと利用者の双方にとって大きなメリットをもたらします。将来を見据えて、最新の情報や技術を積極的に活用し、日々の業務を見直していくことが大切です。

日々の業務が煩雑になり、スタッフの判断回数がどんどん増えてしまう場合、疲労によってミスが多発します。

介護業界全体の問題である人員不足を放置し、業務の見直しを行わない場合、重大な事故を引き起こす確率が上昇することを意識しておく必要があります。

トラブルが生じる前に効率化に着手することをおすすめします。

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