「高齢者虐待防止の推進」とは
高齢者虐待防止の推進を図るためには「高齢者虐待防止法」について知る必要があります。正確には「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」というものです。
「高齢者虐待防止法」の条文の一部を以下に記載します。(さらに詳しく知りたい方は引用のリンクからどうぞ)
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、高齢者に対する虐待が深刻な状況にあり、高齢者の尊厳の保持にとって高齢者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等にかんがみ、高齢者虐待の防止等に関する国等の責務、高齢者虐待を受けた高齢者に対する保護のための措置、養護者の負担の軽減を図ること等の養護者に対する養護者による高齢者虐待の防止に資する支援(以下「養護者に対する支援」という。)のための措置等を定めることにより、高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、もって高齢者の権利利益の擁護に資することを目的とする。
引用:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC1000000124_20220617_504AC0000000068
上記の法律の目的を的確に守るために、今回の「高齢者虐待防止の推進」の義務化がなされたのです。
令和6年度から義務化される「高齢者虐待防止の推進」の内容
では、経過措置が終了し、義務化された高齢者虐待防止法の目的を達成するために、今回は具体的に何をすれば良いのか?
厚生労働省は、以下の活動をするようにと通知しています。
- 虐待の防止のための対策を検討する委員会の開催
- 従業者への委員会結果の周知
- 虐待の防止のための指針の整備
- 研修の実施(※1)
- 虐待の防止に関する措置を適切に実施するための担当者の設置
※1:研修を実施すべき頻度はサービス種別によって異なります。↓
年2回の研修実施:(地域密着型)特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院
「虐待の防止のための対策を検討する委員会の開催」が義務化されるので、その委員会の名称を「虐待防止検討委員会」と一般的に用います。
身体拘束適正化委員会と一体的に開催できる(他の会議体と一体的に開催できる)
生産性向上委員会が義務付けられたり、必要な委員会が増えて困ってしまうのですが…。そのあたり、以下のように厚生労働省も考慮しているようです。
介護保険最新情報:https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryoufiles/documents/2021/0322094050199/ksvol.945.pdf
上記の通知に「虐待防止検討委員会は、他の会議体を設置している場合、これと一体的に設置・運営することとして差し支えない」と文言があるので、内容の近しい身体拘束適正化委員会と一体的に運営しても良いようです。
実際、さまざまな団体で身体拘束適正化委員会と虐待防止検討委員会は一体的に運営しています。以下の団体は、一体的な運営をするとしています。ご参考までに。
※「他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えない」とのことなので、他事業所と同時開催もできる。
※「テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする」とのことから、オンライン開催は可能。ただし「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」と「医療・ 介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」の2つを遵守しなければならない。以下を参照。https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/
虐待防止委員会は年に何回開催すれば良いのか?
開催頻度について「定期的に開催する」としか文言はありませんが、おおむね6ヶ月に1回以上開催することが望ましいとされています。
身体拘束適正化委員会については3ヶ月に1回開催することがチェックポイントになっているため、同時開催するのであれば、3ヶ月に1度の同時開催をしていれば間違い無いでしょう。
エビデンスについては以下をご参考ください。
https://www.city.mizunami.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/450/2.pdf
https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/39378/shintaikousoku.pdf
虐待防止検討委員会で話し合う内容
検討事項は以下のとおりである。
- 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関すること
- 虐待防止のための指針の整備に関すること
- 虐待等について、従業員が相談・報告できる体制整備に関すること
- 従業者が虐待等を把握した際に、市への通報が迅速かつ適切に行なわれるための方法に関すること
- 虐待等が発生した場合、その発生原因等の分析から得られる再発防止策に関すること
- 再発防止策を講じた際の効果についての評価に関すること
等
引用:https://www.city.mizunami.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/450/2.pdf
わかりやすく説明すると、以下のようになります。
組織に関すること | 虐待防止検討委員会やその他の関連組織の構造や役割について議論します。どのような組織が必要で、どんな人が関わるべきか、組織はどのように機能するべきかを決めます。 |
指針の整備に関すること | 虐待を防ぐための具体的なルールや手順を定める指針を作成します。これには、虐待をどのように識別し、どのように対応するかの基準が含まれます。 |
相談・報告体制の整備に関すること | 従業員が虐待に関する疑問や確認事項を気軽に相談や報告できるような体制を作ります。誰に、どのように相談すれば良いのか、秘密を保ちながら安全に報告できる方法を整えることが重要です。 |
市への通報方法に関すること | 従業員が虐待を把握したときに、それを市の関連機関に迅速かつ適切に報告できる手順や方法を定めます。緊急の場合の対応も含め、どのように情報を伝えるかを明確にします。 |
再発防止策に関すること | 虐待が発生した場合、その原因を詳しく分析し、同じような事が再び起こらないようにどのような対策を講じるべきかを検討します。原因に基づいた具体的な改善策を考え、実施します。 |
講じた対策の効果に関すること | 再発防止策を実施した後、その効果がどの程度あったかを評価します。どのように効果を測定し、評価するかについても話し合われるべきです。効果が不十分であれば、さらに改善策を考えます。 |
これらの項目を通じて、虐待を未然に防ぎ、発生した場合には適切に対応できる体制を整えることが目標になります。
まとめ
以上、令和6年度に経過措置が終了し、義務化された「高齢者虐待防止の推進」について解説してきました。
特養においては、以下のようにするのが効率的なのではないでしょうか。
- 身体拘束委員会と虐待防止検討委員会の同時開催をし、担当者を同一とする。
- 3ヶ月に1回、身体拘束委員会と虐待防止検討委員会を同時開催して記録を残す。
- 状況に応じてガイドラインを遵守しつつオンラインを活用。
- 職員へ周知徹底し、記録する。
- 年2回の研修を実施する。
これで必要なことは行えるかと思います。(何か必要な事項などあったらコメント願います!)
以下、参考資料です。
https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2023/1005091757680/ksvol.1174.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001092088.pdf
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